2017.10.18
「ヘパラン硫酸糖鎖構造変化を介したペクチンによる腸管上皮細胞応答」
平成29年10月18日(水曜日)
岐阜大学 応用生物科学部
応用生命科学課程 食品生命科学コース
(兼)生命の鎖統合研究センター:G-CHAIN
つくる領域・糖鎖コアグループ
矢部 富雄 先生
タイトル 「ヘパラン硫酸糖鎖構造変化を介したペクチンによる腸管上皮細胞応答」
=要旨=
水溶性食物繊維の一種であるペクチンはすべての陸生植物の細胞壁と中葉組織とに偏在し、種や組織によってその構造は大きく異なっている。生理機能として,整腸機能のみならず,血糖値上昇抑制効果や免疫機能の活性化などが報告されているが,いまだに具体的なペクチン認識機構は証明されていない。岐阜大学矢部研究室では、ペクチンが生体内で示す広範な機能性の一端は,腸管によるペクチン認識機構を介してもたらされるという仮説を提唱し,分子機構の解明を進めている。ペクチンがフィブロネクチン(FN)III1フラグメントと相互作用し,上皮細胞表面のヘパラン硫酸糖鎖(HS)の構造を変化させることを見出している。ペクチンはFNとα5β1インテグリンを介してHSの硫酸化構造を変化させることが示された。また,ペクチンにより、成長因子Wnt3aとHSの結合力が著しく減弱し,絨毛を形成する上皮細胞が分泌するWnt3aが寄与していること,さらにその分泌はHS糖鎖構造の変化によって制御されている可能性が示唆されことを概説する。