2024.06.20
「Journal of American Chemical Society (JACS) Au」に論文掲載
「Journal of American Chemical Society (JACS) Au」 に弊社研究員が執筆した論文が掲載されました。
題名
「Cyclic peptides KS-133 and KS-487 multifunctionalized nanoparticles enable efficient brain targeting for treating schizophrenia」
(環状ペプチドKS-133とKS-487を搭載する統合失調症治療のための脳移行性の多機能性ナノ粒子)
要旨
末梢組織から脳への薬物輸送のためのドラッグデリバリーシステム(DDS)を確立することは、中枢神経系疾患の治療において重要な課題である。我々は以前に統合失調症の薬物標的である血管作動性腸管ペプチド受容体2(VIPR2)に対する選択的拮抗ペプチドKS-133、そして血液脳関門に発現する低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)に対する選択的結合ペプチドKS-487を報告している。本研究では、脳標的化ペプチドとしてKS-487を、薬物としてKS-133を用いた新らたなDDS戦略を開発し、統合失調症の治療に応用した。蛍光色素インドシアニングリーン(ICG)と結合させたKS-487をマウスに静脈内投与すると、マウスの脳内でICG由来の蛍光が明確に観察された。ICGを内包し、KS-487を提示するナノ粒子(NP)を調製し、マウスに皮下投与すると、ICGが脳に有意に蓄積した。KS-133を内包し、KS-487を提示するNP(KS-133/KS-487 NP)の薬物動態解析では、KS-133が時間依存的に脳に輸送されることが明らかとなった。最後に、統合失調症モデルマウスにKS-133/KS-487 NPを皮下投与したところ、認知機能障害が有意に改善された。本研究は、LRP1標的化とVIPR2阻害による多機能化NPの統合失調症における治療効果の可能性を示した初めての報告である。
なお本論文のカバーアートは JACS Au 2024 年 9 月号の表紙に選出されております
【関連リンク】 JACS Au