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2023.05.10

研究開発・学術発表

「日本薬理学雑誌」に総説掲載

日本薬理学雑誌」 に弊社研究員が共同執筆した総説が掲載されました。


題名
統合失調症の治療を目指した血管作動性腸管ペプチド受容体 2(VIPR2)アンタゴニストペプチドの開発」

要旨
統合失調症は、人口の約 1%(国内罹患者:約 88 万人)に発症する多因子疾患である。既存薬はモノアミン神経伝達物質の調節に関わる作用機序を有するもののみであり、限定的な治療効果や有害作用の発現が課題である。血管作動性腸管ペプチド受容体 2(VIPR2,別名 VPAC2 受容体)は、臨床ならびに非臨床研究から統合失調症の有望な創薬標的として考えられるが、VIPR2 のリガンドがペプチドであることや、 VIPR2 のサブタイプである VIPR1 や PAC1 受容体と立体構造的な相同性が高いことなどにより、VIPR2 に選択的な低分子化合物の開発は難航している。そのような状況のなか、2018 年にファージディスプレイ技術を用いた大規模なペプチドスクリーニングから、VIPR2 に選択的な人工アンタゴニストペプチド VIpep-3が見いだされた。しかしながら、同ペプチドは天然アミノ酸で構成されているため、プロテアーゼによる分解の懸念があった。我々は、既存の VIP/VIPR1 の複合体モデル、VIPR2 の細胞外ドメイン構造、VIP の C末端構造などの情報を参考にして、VIpep-3 の最適化を試みた。得られたペプチドの一つである KS-133(MW = 1558.8)は、VIpep-3(MW = 1941.1)よりも分子量が小さいにも関わらず、選択的かつ強力なVIPR2 阻害活性と高い血中安定性を示した。さらに、KS-133 は VIPR2 を介する大脳皮質前頭前野のリン酸化 CREB の増加を抑制し、また生後発達期の VIPR2 過活性化による認知機能障害の発症を抑制したことから、in vivo における有用性も示唆された。本稿では、VIpep-3 の発見から KS-133 の分子デザイン、そして薬効評価までの一連の研究を紹介し、KS-133 の新しい統合失調症治療薬のリード分子としての可能性を議論したい。


詳しくは、「日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)158,242~245(2023)」をご覧ください。



【関連リンク】 日本薬理学雑誌

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