2024.09.25
「Biochemistry and Biophysics Reports」に論文掲載
「Biochemistry and Biophysics Reports」 に弊社研究員が執筆した「アントリシン(ジュニパーベリー活性成分)」に関する論文が掲載されました。
題名
「Anthricin-induced hyperactive proteasome and its molecular mechanism」
(アントリシンが誘導するハイパーアクティブなプロテアソームとその分子メカニズム)
要旨
近年、創薬ターゲットをタンパク質分解系のプロテアソームに誘導して分解させる新たな創薬手法 (タンパク質分解誘導薬) の開発が進んでおり、それと同時にプロテアソームの活性を向上させる化合物の開発も注目されている。我々は2023年にジュニパーベリーといったメディカルハーブから単離される天然物であるアントリシンがプロテアソームの活性を向上させることを報告した。しかしながら、そのメカニズムがプロテアソームの発現亢進によるものなのか、またはプロテアソームの機能向上によるものなのかは不明であった。本研究では、(1) アントリシンとその類縁化合物のプロテアソーム活性における構造活性相関、(2) アントリシンのプロテアソーム関連遺伝子発現への影響、(3) プルダウン法を用いたアントリシンとプロテアソームの直接結合の検証、(4) さらには分子動力学シミュレーションによるアントリシンとプロテアソームの相互作用解析を実施した。この結果、アントリシンはプロテアソームの遺伝子発現を誘導しているのではなく、プロテアソームのβサブユニットに結合し、触媒部位であるThr1、Asp17、Lys33の3アミノ酸残基の側鎖間の距離を縮めることでハイパーアクティブな状態にしていることが示唆された。本研究はアントリシンによるプロテアソーム活性向上のメカニズムを分子レベルで示唆した初めての報告であり、プロテアソームの活性を制御することでタンパク質分解誘導薬の効果を増強する新ケモタイプの開発に寄与するものである。
詳しくは、「Biochemistry and Biophysics Reports 40(2024)101830」をご覧ください。